本編 第3回 「夫人、北洲との出会い」
実家の仙台にいる母に、電話で家の話をする。ハウスメーカーを吟味しているところだと言うと、「北洲ハウジングは?」と言われた。
「北洲ハウジング…?」
仙台に住んでいた頃、そうあれは夫人がまだお年頃だった時、近所に、たいそうおしゃれな家が建った。赤い大屋根でレンガの壁のような、まるでシルバニアファミリーシリーズにありそうな家だった。
近所で「あのおしゃれな家」と言われるほど際立っておしゃれだった。当時から家に憧れをもってた夫人だが、その家は今でもはっきり思い出せるほどの外観的魅力をもっていた。
北洲ハウジングは、仙台、岩手に本社があり、そのため「冬の寒さに強い」を売りにしている。東北では名の知れたハウスメーカーであった。
「ホラ、川名(仮名)さんちだよ、あのおしゃれな家の」
母に言われるまで、少女時代に憧れたあの家の存在をすっかり忘れていた。しかし思い出したところで、どうせ高いんだろうし…おしゃれすぎてついていけないし…デザインが良いだけじゃあねぇと、あまり真剣に検討はしなかった。
住友林業と話が進む中、「一応」という感じで北洲ハウジングの展示場へ行くことに。
住友林業との話し合いの過程で全く不満なことはなく、むしろほぼ契約決定間際のことだった。しかも申し込み金5万も払ってしまっていた。
北洲ハウジング 某展示場、まずは外観。予想以上の圧倒的な見た目力。川名さんの家以上に私の好みのデザインだった。
家の中の特徴としては、生活動線を第一に考えたループプラン(部屋の行き止まりがない間取り)。住友林業のような高級な感じではないが、内装のセンスが独特で素晴らしい。そして極め付けが寝室の勾配天井(しかも板ばり)。これには我ら夫婦さすがにやられる。それでも、「ここまでやったらどうせ相当な予算オーバー」と思い、営業の方にはその場しのぎの対応をして帰ったのであった。
後日、北洲ハウジングの担当者(あだ名:きくりん)から、
「実例見学会行きませんか?住んでから4年目のお宅です。」と連絡が。
「え?完成仕立ての家じゃないの?」
「完成仕立ての家の見学もできますが、住んでから年数が経っている家の方をみてもらいたいのです。」
我ら夫婦は「もう気持ちは住友林業なんだけどなぁ…めんどくさいなぁ…」と思いながらも、やはり「一応」見に行くことにしたのであった。
次回「夫人、セイトゥーマイセルフ」